ナース裕美です。
点滴が苦手。。
点滴のコツが知りたい!
そんな悩みに元ICU看護師の私がお答えします。
末梢点滴とは手足から直接血管に針を入れて水分または薬を入れることを指します。
法的に看護師が末梢点滴を挿入できるようになったのはごく最近です。
それまでは静脈注射は医師の業務範囲でした。
しかし、実際には医師が多忙のため病棟看護師が末梢点滴を挿入している病院は多くあったため、現状の検討がされ、看護師が法的にも末梢点滴挿入ができるようになりました。
現在、末梢点滴のルート確保は看護師の日常ケアの中でも頻度の高い手技となっていますが、患者さんの状態はひとそれぞれ。
中には血管が細かったり、もろかったり、わかりにくかったり…、ルートの確保が困難な患者さんも多くいます。
そのため末梢点滴挿入に苦手意識を持つ看護師も少なくありません。
この記事では、元ICU看護師の私がどんなことに注意して点滴を行えば失敗が減るのか、苦手意識を克服できるのか、穿刺部位の選び方から、挿入時のポイントまで解説します。
あなたの看護師人生の一助になれば幸いです。
この記事の執筆者
ナース裕美 / 緒方裕美
大学病院にて眼科、ICUに11年勤務。今はフリーランス。
看護師に役立つ記事作成をしています。
点滴のコツ【物品の準備】
点滴挿入の物品を準備します。
ここで不備があると、また取りに戻ったり、挿入したときに物が足りなくてパニックになったり、スムーズに処置が行えません。
何事も準備はしっかりと行いましょう。
必要物品
・点滴指示書
・輸液製剤(クレンメ付きルート+三方活栓+延長チューブを接続してトレイに準備)
・グローブ
・駆血帯
・消毒液
・針廃棄容器
※これらは台車に準備しておきます。
・静脈留置針(患者さんの血管にあわせて21G~24G)
・消毒綿
・固定用テープ ・ドレッシング剤 ・防水シーツ(患者さんのベッドを汚さないため必要)
※これらは1つのトレーにまとめます。
点滴のコツ【患者さんの準備】
患者さんに点滴があることを説明します。
基本的には医師から患者さんへ点滴がある旨が説明されています。
もし説明されていないようなら、一度医師から何のための点滴なのかを説明してもらうことも必要です。
患者さんにフルネームを名乗ってもらい、ベッドネーム、ネームバンドで本人確認を行います。
点滴挿入で気分不快を起こす患者さんもいますので、ベッドに横になってもらった方が安全に処置を行えます。
また、点滴開始前にお手洗いに誘導しておくことも大切です。
点滴のコツ【物品の配置】
患者さんの準備が整ったら穿刺準備を行います。
患者さんに安楽な体勢をとってもらいます。
できるだけ、穿刺部が自分の正面にくるように配置させてもらいましょう。
穿刺物品の配置を行います。
自分が無理のない体勢で行えるように配置することが必要です。
手を伸ばして取る必要がある台車の上に置いてしまうと、穿刺部から目を離すことになり失敗の原因となります。
患者さんに確認をとり、ベッドの上に配置させてもらえると使いやすいです。
消毒綿を開けておく、留置針のキャップを緩めておく、ドレッシング剤がすぐ使えるようにする、点滴ルートの接続部を緩めておく、など細かい物品の準備をしておくことが大切です。
この物品の配置はとっても重要です。
自分が使いづらかったり、無理な体勢で物を取らなければいけなかったりすると、点滴挿入を失敗するリスクが高まります。
経験を重ねるうちに使いやすい配置が分かってきます。
点滴のコツ【穿刺部の選定】
点滴の挿入部位を確認します。
採血とは違い基本的には前腕部に挿入することになります。
前腕部が難しければ手背や上腕になります。
寝たきりの患者さんへは下肢に挿入することもありますが、実際のところ、そこまでルート確保が難しい患者さんの場合は末梢点滴ではなくて中心静脈栄養の方がよさそうですよね。
体験談
後輩の点滴挿入の練習に手を貸したことがあります。
前腕部はそれほど痛みはありませんが、手背に針を刺すのは痛いです。
点滴挿入部は関節に近いところを避けます。
真っすぐで、できるだけ太い血管を探します。
関節に近いところに末梢点滴を取ってしまうと、患者さんが体を動かしたときに点滴が落ちなくなります。
輸液ポンプやシリンジポンプのアラームが鳴り続けますので注意が必要です。
前腕や手背に挿入する場合は、できるだけ利き手ではない方に挿入すると患者さんの生活の妨げになることを防ぐことができます。
また、前腕の横や裏にもいい血管があることがあります。くまなく探しましょう。
血管が見えにくい場合は、患者さんに手をグーパーしてもらう、もしくは温めておくのも有効です。
点滴挿入が禁忌⇒シャントがある。麻痺側。皮膚のトラブルがある。
血管の選定は重要です。
穿刺の技術より、血管を探して選ぶ技術の方が大切なくらいです。
「ここならとれそうかな?」「多分大丈夫なはず」なんて、曖昧な感じで穿刺するのはダメです。すぐ漏れます。
患者さんへの侵襲が大きい処置だからこそ、「確実にいける!」という血管を探すことが重要です。
何度も刺されるの嫌ですよね。それならば血管を見極めるのに時間をかけられた方がましです。
点滴のコツ【穿刺】
穿刺する血管を見つけたら消毒します。
必ずアルコールのアレルギーがないかの確認を行いましょう。
もし、アレルギーがある場合は、アルコールが含まれない消毒綿で消毒します。
消毒液が乾燥したら穿刺です。
留置針の刃先が上に向いているかを確認して約30度の角度をつけて穿刺します。
ここでは留置針の持ち方がポイントです。
針を上から持つと、穿刺後外筒を進める際に針を固定しづらくなります。
針の下に親指以外の指が来るように持つと、固定が安定します。
穿刺時に手の先にしびれがないか確認しましょう。
しびれがある場合は神経損傷の可能性があります。
穿刺して「プチッ」という感触があったら血管内に針先が入っています。
そして、留置針にも逆血がみられるでしょう。
逆血が確認出来たら針を10~15度に寝かせて3~5㎜進めます。
この針を進める動作を行わないと、刃先が血管壁すれすれの位置にある可能性が高いため、確実に血管内に針を挿入するためにも、針を少し進めましょう。
確実に針が血管内に入ったら、内針を固定したまま外筒を進めます。
一緒に内針を進めないようにしましょう。
針が血管壁を突き破り漏れます。
外筒を最後まで進めることができたら、ほぼ留置成功です!
駆血帯を外して、外筒の先端があると思われる部位を圧迫しながら内針を抜きます。
気をつけないと、内針と一緒に外筒も抜けてきてしまいます。
外筒の先端と共に、コネクト部分を軽く押さえておくと失敗しません。
体験談
この内針を抜くのにコツがいります。
私は右利きなので、左手薬指で外筒の先端部分を圧迫しながら、親指と人差し指でコネクト部分を押さえ、外筒が抜けないようにしていました。
点滴のコツ【点滴開始】
内針を抜き終わったら、点滴ルートを接続します。
確実に接続が終わるまで、外筒先端の圧迫は緩めません。
ルートの接続ができたら、クレンメを開放し自然滴下を確認します。
挿入部に痛みはないか、腫れてこないかを確認します。
患者さんへも点滴の途中で痛みが出たり、腫れてきた場合はすぐにナースコールをするように説明します。
点滴のコツ【固定】
滴下の確認が済んだら固定します。
刺入部が中心に来るようにドレッシング剤を貼付します。
その後、ループを作るようにしてテープで固定します。ループがないと、意図せず引っ張られてしまったときに抜針しやすくなってしまいます。
体験談
ICUでは一日で点滴が終わることはありません。
数日ヘパロックをしながら使用することになります。
留置針とルートのコネクト部に皮膚トラブルを生じるケースが多かったため、コネクト部分にドレッシング剤(デュオアクティブなど)をかませていました。
まとめ
・点滴挿入の成功は血管の選定にかかっているといっても過言ではありません。確実に取れる部位を探しましょう。
・何事も初めからうまくいくことなんてありません。経験値を積むことが大切です。コツがわかる瞬間はきます。
・成功体験を積んでいきましょう。苦手だからと逃げていては、いつまでも上手くなりません。
末梢点滴のコツをご説明しました。
あなたの看護師人生が充実するよう願っています。
執筆者情報:裕美の転職研究所
ナース裕美(緒方 裕美)
看護師。大学病院にて眼科、ICUに11年勤務。今はフリーランス。
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