特別支援学校の看護師の仕事内容は??
特別支援学校の看護師の求人はどうやって探せばいいの?
そんな疑問にお答えします。
特別支援学校とは障害の程度が比較的重い子どもを対象として教育を行う学校です。
公立特別支援学校(小・中学部)の1学級の標準は6人 (重複障害の場合3人)、対象障害種は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱を含む)となっています。
特別支援学校は私立学校も存在しますが、国立・県立・市立・区立などの公的機関であることが多いです。
そのため、それらの特別支援学校に勤務する看護師は公務員扱いになり、市立の学校であれば市の職員と同じ給与基準となります。
また、県立・都立などであれば県・都の職員と同じで、正社員・常勤であればボーナスの支給もあります。
特別支援学校における看護師の配置人数は、都道府県・各地域によって異なります。
また、その勤務形態も病院からの出向であったり、常勤・非常勤としての勤務だったり、パートであったりとばらつきがあり、コスト削減のためか正社員よりもパート・アルバイト職員の割合が高いことも特徴です。
特別支援学校での看護師配置人数は少なく、離職者も少ないため求人数自体も少ないと言えます。
応募条件も厳しいところが多いのも特徴で、看護師としての臨床経験を5~10年としていたり、小児科の経験が必須であったりと、看護師免許さえあれば誰でも…というわけではないため狭き門となります。
この記事では特別支援学校の看護師の特徴やメリット・デメリット、求人の探し方をご説明します。
あなたの転職活動の一助になれば幸いです。
この記事の執筆者
ナース裕美(緒方裕美)
看護師。大学病院にて眼科、ICUに11年勤務後独立。現在はキャリアアドバイザーとして活動中。
保有資格は「看護師免許」、「職業紹介責任者(番号:001-220124001-05302)」
『ナース裕美の看護師転職サイト早わかり解説』(Kindle)著者。
看護師としての視点から、転職に役立つ記事作成をしています。
当メディアは厚生労働省が規定している職業紹介責任者が監修しています。
特別支援学校の看護師の仕事内容
医療技術の進歩や在宅医療の普及を背景に、特別支援学校在籍者の中で、医療的ケアを必要とする児童生徒が急速に増加していると言われています。
特別支援学校での医療的ケアは保護者が付き添い行っていた過去があります。
しかし、保護者の負担が大きいことや、看護師の配置を希望する声が多く、学校における医療的ケアの取り組みが進められました。
一般的に医療的ケアとは、医師や看護師等の免許を持つものが行う、痰の吸引や経管栄養、気管切開部の衛生管理等の医行為のことを指します。
学校現場における、医療的ケアには、栄養管理、呼吸管理、排泄管理等があげられます。
上記の医療的ケアの中で、痰の吸引の一部・経管栄養の一部に関しては研修を終了し、都道府県知事に認定された教職員等も実施することが可能となりました。
それでは、具体的な特別支援学校看護師の仕事内容をご説明します。
(1)医療処置
特別支援学校で実施できる医療的ケアは以下の10項目となります。
① 吸引
吸引は児童生徒が所有している吸引器を使用します。
吸引は都道府県知事に認定された教職員も行うことができます。
しかし、口鼻腔吸引では咽頭の手前までの実施、気管切開部からの吸引ではカニューレ内に限る、など内容や範囲が決められています。
スクールバスなど専用通学車両の登下校において、乗車中に喀痰吸引が必要になる場合には、看護師が対応するため必要時スクールバスへ同乗することがあります。
② 経管栄養
経管栄養の一部は都道府県知事に認定された教職員も行うことができます。
胃ろう・腸ろうの状態に問題がないこと及び鼻からの経管栄養のチューブが正確に胃の中に挿入されていることの確認は、看護師が行います。
学校にいる間も経管栄養を提供することで日常生活リズムの形成に役立ちます。
③ 導尿
導尿は時間を決めて行います。
そうすることで経管栄養と同様、日常生活リズムの形成に役立ちます。また自己導尿を行う生徒の介助を行うこともあります。
④ エアウェイの管理
エアウェイ挿入中の生徒に対してエアウェイの挿入が確実にされているかなどの確認を行います。
⑤ 定時の薬液の吸入
医師の指示で薬液の使用がある場合は、指示時間に投与を行います。
⑥ 気管切開部の衛生管理
気管切開部の観察を行います。
分泌物で汚染がある場合はガーゼの交換などを行います。
⑦ 胃ろう又は腸ろう部の衛生管理
胃ろう、腸ろうの状態について管理を行います。
自然抜去の有無や、周辺皮膚の観察を行います。
⑧日常的酸素管理及び呼吸補助装置の管理
酸素ボンベを使用し持続的酸素療法を行っている生徒もいます。
酸素ボンベの残量確認や管理を行います。
⑨人工呼吸器の管理
移動式の人工呼吸器を使用している生徒もいますので、在学中の呼吸器の管理を行います。
⑩血糖値測定及びその後の処置
指示時間に血糖測定を行い、血糖値に応じた処置を実施します。
(2)主治医やデイサービスなどとの連絡調整
生徒の主治医と連携を図り、生徒の処置方法や緊急時の対応などを決定します。
(3)教職員への助言・指導
医療的ケアを必要とする生徒への対応についての助言や、医療的ケア実施のための指導を行います。
特別支援学校の看護師の年収
特別支援学校は公的機関である場合が多いため、そこに勤める人は地方公務員扱いとなります。
地方公務員の年収は各自治体の条例で定められていますので、それらに準ずることになります。
また、特別支援学校の看護師は常勤だけではありません。
非常勤として募集している学校も少なくありません。
その場合は時給労働となりますが、自治体によって時給に差が出てきます。
この場合、首都圏のほうが時給が高めに設定されている場合が多いと言えます。
特別支援学校の看護師のメリットデメリット
ここでは特別支援学校の看護師のメリット、デメリットをご説明します。
メリットデメリットをよく確認して、転職の参考にしてくださいね。
メリット
個別性のあるケアを行うことができる
同じ医療的ケアを行うにしても、生徒一人ひとりケアで注意するべき点や観察が必要な点が異なります。
基本的には生徒ごとに医療的ケアに関するマニュアルが定められているため、そのマニュアルに沿って技術を提供します。
しかし、看護師として、その生徒のケアのあり方を模索し、提供していくことが必要となります。
そして、生徒がより良い環境の中で、より良い状態で教育が受けられるように看護師自身もケアを提供していくことが重要です。
指導力を養うことができる
特別支援学校において看護師は医療的ケアに関する指導者的立場にあります。
教員が生徒に対して医療的ケアを行うことに関して、教員が生徒の状態をどう判断し、どのようにケアを提供し、評価したのかを把握し、必要に応じて医療者視点での指導を行います。
それにより、生徒に安全でより良いケアを提供できるようになります。
病院で同じ医療者である後輩看護師に指導するのとはわけが違います。
非医療者である教員にもわかりやすく指導・アドバイスを行うことが必要になりますので、おのずと指導力の向上につながります。
日勤のみ、残業は少ない、休みをしっかり取れる
学校への勤務のため日勤のみとなります。
また、生徒が下校してしまえば、あとは片付けや事務作業となるため残業は少ない傾向にあります。
学校のため土日・祝日は休みですし、夏休みの勤務もありません。
家庭や育児と両立を希望する人には向いている職場といえます。
生徒の成長を見られる
学校によっては小学校から高校卒業まで最長で12年間同じ生徒と関わることができます。
学校では生徒の成長を間近で感じられる学校行事も多くあります。
生徒たちの成長が看護師としてのやりがいにもつながります。
デメリット
生徒と関わる時間は短い
特別支援学校は治療の場ではなく教育の場であります。
そのため、生徒と一番長く接するのは教員となります。
常に生徒を観察できるわけではないため、生徒の全体像を把握しづらく、観察・アセスメント・実施・評価、といった看護師としてのプロセスを踏むことができずに医療処置を提供することになります。
そのことに看護師としての葛藤を抱える人も多いようです。
しかし、教員と生徒の情報を共有し、その情報からアセスメントし医療処置を実施していく、という協働をしていくことで、その一連のプロセスを踏むことが可能となります。
また、生徒と関わる時間が短くても医療的ケアを通して声掛けを行い、生徒との関係性の形成を行っていくことが必要です。
プレッシャーが重い
特別支援学校に常駐の医師はいません。
看護師が唯一の医療従事者となるため、医療に関しては学校スタッフより頼りにされる存在であると言えます。
緊急事態への遭遇も少なくありません。
緊急時に対しての医師の指示書がある場合もありますが、それ以外の緊急事態が起こることもあります。
まずは緊急事態をできる限り避けるための予防的関わりが必要です。
また、緊急事態が起きてしまったときの早期発見・早期対応を行うことが重要となります。
その上で、生徒の状態に何かが起こった時に看護師は呼ばれます。
緊急時に何を行うべきか、という判断を看護師にまるっとゆだねられることになりますので、その重圧は計り知れません。
教員との関係性に悩むことが多い
特別支援学校は教育の場であるため、主体は教員となります。
また、教員によって行うことができる医療処置もあります。生徒のケア自体も教員が行います。そのため看護師としての立ち位置が不透明となり、戸惑いを抱える看護師も少なくありません。
しかし、看護師としての立場・視点から生徒を観察し、アセスメントを行い、問題点を探っていくという役割は他の医療施設と変わりがないと言えます。
また、看護師は教員からの情報をもとにケアを提供することが多いです。
そのため、教員の観察眼を信頼できてはじめて安全な医療を提供することが可能となります。
日ごろから教員とのコミュニケーションによる連携を図り、信頼関係を築いていくことが重要となります。
保護者との関係が難しい
特別支援学校の看護師配置は生徒保護者の強い要望によって叶えられました。
しかし、保護者の中には「学校に看護師がいるのだから多少子どもの体調が悪くても、学校に行かせておけば安心」と生徒の具合が悪くても登校させることがあります。
それにも関わらず、学校で緊急事態が起こり生徒の状態が少しでも悪くなってしまったり、少しでも処置が遅れたりすると、「看護師がいるのに…」と看護師に責任を丸投げされてしまうこともあります。やりきれません。
相談相手がいない
特別支援学校における看護師の配置人数は都道府県・地域によってばらつきがありますが、一緒に働く看護師の人数は少ないと言えます。
特別支援学校の看護師同士の横のつながりを持つ機会もありません。
職場内で同じ立場の看護師が少ないため、業務に関してや人間関係に対して等の相談をする相手が少なく、思いを一人で抱え込みがちとなってしまいます。
特別支援学校の看護師に向いている人
ここでは、特別支援学校の看護師に向いている人をご説明します。
プライベートとの両立を希望する人
前述の通り、残業も少なく夜勤もありません。
休みもしっかり取れるため、育児・介護との両立や配偶者の扶養範囲内で働きたい人、プライベートを充実させたい人に向いている職場となります。
柔軟に対応ができる人
医療機関での業務とは異なることが多いです。
使用物品にしても、備え付けのものを使用するのではなく、生徒個人のものを使用することになります。機器の使用方法も様々です。
学校特有の環境に対応する必要もあります。何事においても柔軟に対応していくことが必要となります。
小児科、療育分野、訪問看護の経験がある人
これらの経験がなくても問題なく勤務することは可能です。
しかし、経験があれば、より生徒や家族が置かれている状況に理解を深められます。
それが生徒や家族との関係形成に役立つでしょう。
逆に特別支援学校での経験があれば、療育分野や訪問看護への転職に有利となると言えます。
特別支援学校の看護師求人を探すには
公立の特別支援学校
公立の特別支援学校はハローワークで求人が出ることが多いため、まずはハローワークを探します。
ハローワークインターネットサービス
ハローワークインターネットサービス – トップページ (mhlw.go.jp)
私立の特別支援学校
私立の特別支援学校は転職サイトで求人を探します。
看護師専門の転職サイトは一般には公開されていない、条件の良い非公開求人もありますので、必ずチェックしておきたいところです。
また、転職サイトも様々なものがありますので、選ぶ際は求人数が多いこと、利用者満足度が高いことを確認して失敗のないようにしてくださいね。
転職サイト選びが転職成功の鍵をにぎっています。
おすすめの転職サイトは以下の記事を参考にしてください。
特別支援学校の看護師を辞めたくなったら
まずは何が問題で辞めたくなったのかを分析してみましょう。
「自分の努力では解決できない問題なのか」
「なにかを変えることで解決できないのか」
「本当に辞めないと解決できないことなのか」
環境を変えたり、やり方を変えても問題が解決できない、辞めることでしか問題を解決できないようであれば辞めてしまっても構わないと思います。
看護師として働ける職場はたくさんあります。
心身に無理を強いてまで働き続けることはありません。
自分を大切にしましょう。
特別支援学級と同じような環境で働きたいのであれば、小児科や保育園、病児保育などもおすすめです。
資格があれば養護教諭として働くのもいいでしょう。
選択肢はあります。自分の将来のキャリアビジョン「何をしたいのか」「どう働きたいのか」を明確にして一歩踏み出してみましょう。
まとめ
・特別支援学校での看護師配置人数は少なく、離職者も少ないため求人数自体が少ない
・特別支援学校は応募条件も厳しいところが多く、狭き門となる
・特別支援学校の看護師は日勤のみ、残業は少ない、休みをしっかり取れる
特別支援学校の看護師についてご説明しました。
あなたの転職が本当に満足いくものになるように願っています。
執筆者情報:裕美の転職研究所
ナース裕美(緒方 裕美)
看護師。大学病院にて眼科、ICUに11年勤務。今はフリーランス。
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Email:nursehirocom@yahoo.co.jp
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